シニアの断捨離は
筋肉痛との闘いです…。
シニア入門日記-3

定年退職した人が「やりたい」と願うことの定番と言えば「旅行」「趣味」「自宅の不用品整理」の3つではないでしょうか。
2024年をもってセミリタイアした私が真っ先に取り組んだのも、時間がないことを言い訳に放置していた自宅の片付けでした。

「いつか着るかも」と思いつつ何年も出番のないままギュウギュウに押し込まれた服はクローゼットの中で満杯になり、自分の作品が掲載された雑誌は家の至るところに山積み。
娘二人はとっくに社会人になって巣立ったというのに、彼女らが処分を怠り残していった学用品の数々も段ボールに詰め込んだまま。
現在は夫婦二人暮らしの小さな暮らしのはずが、自宅の5部屋すべてが物で溢れていて床が見えない状態だったのです。

本来はミニマリスト気質の私。
「物は無くても何とかなる」が信条で、旅行の荷物の少なさには定評がありました。
日常生活でも旅でも、荷物が増えると管理する労力が増え、自由に動けなくなります。
それを思い出した途端、不用品に囲まれた生活から脱却したくなり、猛烈な勢いで片付けを始めました。

「昔の自分を取り戻すんだ!」その姿はまるで突如として第二の青春に目覚め突っ走り始めた昭和のオジサン。
夫に全面的な自宅の模様替えを宣言し「何がどう変わっても妻に文句は言いません」という念書をとり、不用品の山に立ち向かうこと1ヶ月。
掘っても掘っても湧いて出るかのような不用品を「ワケルくん」で知られる仙台市のリサイクル情報サイト「ワケルネット」で処分方法を一つ一つ調べては分別し、ゴミ集積所や資源回収庫、リサイクルショップへ運び込む毎日でした。

粗大ゴミも自力で処理施設へ搬送していたせいか、不用品整理中の1ヶ月間は筋肉痛が絶えず、腕時計に記録された歩数は1日1万歩を下る日がありませんでした。
豪邸でもない家の中を片付けるだけで運動になるとは…。
ワケルくん家族に「フィットネス部門を作ってみてはどうか?」と提案したくなるほどの発見でした。
果たして毎日の筋肉痛のお陰でほとんどの不用品は自宅から消え、わが家の床は再び姿を現したのです。
次なる目標は「シニア夫婦のための家づくり」。
嬉々として二人暮らし用のインテリアコーディネートを始めた私でしたが、これが娘を泣かせることになってしまうとは思いもしませんでした。
(次回に続く)
河北新報2025年6月掲載
「井上きみどりのシニア入門日記」